膝の痛みが出る原因と対処法

膝には毎日大きな負担がかかっています。中高年になると、その負担が長年積み重なることで痛みが現れてしまうことが多いです。今回は膝の痛みの主な原因と、その対処法についてお話させていただきます。

◇膝の痛みの原因

・変形性膝関節症

変形性膝関節症は膝関節に痛みが生じる代表的な疾患で、40代くらいから増え始めます。膝関節とは大腿骨、脛骨、膝蓋骨が接する部分のことで、各骨が接する面は関節軟骨で覆われています。関節軟骨は骨同士がぶつかり合わないようクッションの役割を担っており、これによってスムーズに膝を動かすことができています。しかし、加齢とともに関節軟骨の主成分であるヒアルロン酸が減少していき、軟骨がすり減り、骨がぶつかり合ってしまうことで膝の痛みが現れてしまいます。変形性膝関節症は進行性の疾患です。症状が進んでいくと痛みが強くなり、膝の曲げ伸ばしがしにくくなって日常生活に支障をきたしてしまいます。
初期は立ち上がりや歩き始めに痛みが出やすいが、しばらく休むと治まります。軟骨のすり減りが進行すると、膝に炎症が起こって水が溜まる、階段の昇り降りがつらい、正座がつらいなどの症状が現れます。さらに進行すると関節がO脚やX脚に変形して足がまっすぐ伸びなくなってしまったり、強い痛みが出て歩くのも難しくなってしまいます。
関節軟骨には血管が通っていないので血液により栄養することができないため、残念ながらすり減った軟骨は元に戻らないとされています。


・半月板損傷

半月板とは大腿骨と脛骨の間にある軟骨組織です。膝の内側と外側に1つずつ存在しており、関節にかかる体重を分散させる、関節の位置を安定させるなどの役割を担っています。日常生活やスポーツで膝に強い負荷がかかることで半月板に傷がつき、痛みが生じてしまいます。スポーツ中の損傷では、急な切り返しやジャンプの着地で起こることが多いため、バスケットボールやサッカーなどで報告されることが多いようです。また、60代以降になると加齢により半月板が劣化してしまい、スポーツのような激しい動きをしなくても、ちょっとした日常生活での衝撃で損傷しやすくなっているので注意が必要です。
半月板の損傷には痛みを伴い、その後しばらくすると腫れてくることが多いです。痛み腫れが治まっても、膝の曲げ伸ばしでコキッと音が鳴る、歩いていると突然がくっと膝が崩れる、膝がうまく動かせないといった症状が現れます。また、普段は痛みを感じなくても激しい運動をすると痛みが現れたり、腫れたりすることもあるようです。

・関節リウマチ

関節リウマチは膝だけに限らず全身に症状が現れる疾患です。関節が炎症を起こし、関節の腫れや変形を引き起こします。発症初期では体がだるい、熱っぽい、起床時に関節周囲のこわばりを感じるなどの症状が現れます。症状が進行すると、手指などの関節の腫れや、膝、股関節、肩など全身に痛みが広がります。さらに症状が進むと膝に水が溜まる、関節がうまく動かせない、強い痛みにより歩くのが難しくなるなどの症状が現れ、日常生活に支障をきたすこともあります。関節リウマチは30~40代の女性に多くみられる疾患ですが、誰でもなり得る疾患です。体のだるさや関節痛などの症状を感じたら早めに医療機関で相談することをおすすめします。

◇自分でできる膝の痛みへの対処法

・冷やすor温める~膝の痛みに~

まず痛みが出ている部分が腫れていないか、熱を持っていないか確認します。熱や腫れがある場合は炎症が起こっているので冷やすのが有効です。氷嚢や保冷剤を直接肌に当てないよう布を挟むなどして冷やします。冷やす時間は30分以内が良いでしょう。
慢性的な痛みで、熱や腫れがみられない場合は温めるのが有効です。温めることで血行が良くなり、痛みの原因物質や老廃物を流してくれることで痛みの改善が期待できます。温め方のおすすめは入浴です。膝だけでなく全身を温めることができます。湯たんぽやレッグウォーマー、膝かけなどを使用しても良いでしょう。


・ウォーキング~膝の痛みに~

膝の痛みの原因の多くは筋肉の衰えです。加齢とともに筋力が低下すると体重を支えるために関節の内側に負担が集中してしまいます。それによって軟骨がすり減り痛みや炎症を生じます。適度に運動することによって筋肉をつけるとともに、筋肉や腱の柔軟性を高めることができ、膝への負担を軽くさせる効果が期待できます。適度な運動はコラーゲンの産生を促し、関節軟骨に関節液が行きわたりやすくするとも言われています。
運動の方法ですが、ウォーキングが手軽に始められる運動としておすすめです。普段体を動かさない人が急に運動すると、逆に膝にダメージを受けてしまいます。ウォーキングなら年齢など関係なく自分のペースで体を動かすことができます。そして、歩き方が悪いと膝への負担が増加してしまうおそれがあるため、正しい歩き方でウォーキングすることが大切です。正しい歩き方というのは、脚を前に出したときに膝が伸びている状態です。膝を曲げたまま歩いてしまうと、ある一部分にだけ負荷がかかり膝蓋骨が不安定になってしまいます。背筋を伸ばす・腕は自然に振る・かかとから着地して親指の付け根に体重移動し、つま先で地面を蹴るという歩き方を意識することで膝への負担を軽くすることができます。時々ショーウインドウなどで自分の歩き方を確認してみると良いでしょう。
また、水中ウォーキングもおすすめです。プールなど水中での運動は、浮力によって体重を支えるための負担が軽減されるため、通常での運動と比べて関節への衝撃を軽くすることができます。さらに、水中での運動は関節を円滑に動かすのを助けてくれるので、可動域を広げる効果が期待できます。水中ウォーキングは姿勢をしっかり保つことが大切です。地上と同じように背筋を伸ばし、脚をしっかり底につけて歩きましょう。最初は浅めのプールから始め、徐々に水深が深いプールに移行していきましょう。

・ストレッチ~膝の痛みに~

血行不良による筋肉のこわばりから痛みが生じることもあるので、ストレッチにより筋肉の柔軟性を高めることも膝の痛みを軽減することに役立つでしょう。ここでは自宅で手軽にできるストレッチの例を少し紹介します。無理なく続けることが大切です。痛みが強い場合は中止してください。
① 太ももの筋肉を鍛えるストレッチ
・椅子に浅く腰かけます
・片方の膝を伸ばし、かかとが地面から10cmほど離れている高さで5秒間キープします
・脚を戻し、反対の脚も同様に行います
② 膝やふくらはぎの筋肉の柔軟性を高めるストレッチ
・床に背筋と膝を伸ばして座ります
・両脚の足首を同時に、ゆっくり大きく前後に動かします
③ 膝を曲げる筋肉を鍛えるストレッチ
・膝を立てて仰向けになります
・その姿勢のままお尻を上げます
※難しい場合は、膝を曲げる角度を深くすると負荷が軽くなります。慣れてきたら膝の角度を浅くしていくと良いでしょう。


まとめ

◇おわりに
今回は膝の痛みの原因となる疾患と、その対処法についてお話させていただきました。今回紹介したウォーキング方法を試してみるなど生活習慣の見直しを行っても痛みが継続する、強い痛みが現れるような場合は無理せずお早めに医療機関へご相談ください。日常生活に支障が出る前に対応することが早期回復に重要です。簡単なお悩みでもかまいません。ぜひ当院にご相談ください。一緒に痛みに負けない体作りをしていきましょう。

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