鼻水や鼻づまり…つらい花粉症についてのお話

花粉症は鼻水や鼻づまり、目のかゆみなどの症状を引き起こします。日本人の40%以上が発症しているとされ、さらに今後増加していくと考えられています。今回はそんな花粉症のメカニズムや日常でできる対処法についてお話していきます。

◇そもそも花粉症って?

・花粉症のメカニズム

私たちの体には、「免疫」という体の中に侵入した異物を攻撃して、体を守るシステムがあります。この免疫システムが花粉に対して過剰に反応してしまうと、鼻水やくしゃみなどの症状が現れる花粉症というアレルギー反応が起こります。
体に侵入する異物を抗原と言いますが、そのなかでもアレルギー症状を引き起こす物質のことをアレルゲンと呼びます。花粉のほかに食べ物やダニ、ほこりなどもアレルゲンになり得ます。アレルゲンが人の鼻や目などから体へ侵入すると、体内でIgE抗体という物質が作られ、肥満細胞に結合します。その後アレルゲンが再び体内へ侵入すると、肥満細胞からヒスタミン、ロイコトリエンといったアレルギー誘発物質が放出されます。この反応が目の粘膜で起これば目のかゆみや涙目、鼻の粘膜で起これば鼻水やくしゃみなどの症状が現れます。


・花粉症の主な症状

花粉症の症状で主なものはアレルギー性鼻炎とアレルギー性結膜炎です。
アレルギー性鼻炎の症状は鼻づまり、鼻水、くしゃみなどです。くしゃみと鼻水がひどいタイプ、鼻水がひどいタイプ、3つとも症状があるタイプの人がいます。くしゃみ、鼻水は肥満細胞から放出されるヒスタミンなどの物質が神経を刺激し、花粉を追い出そうとして起こります。花粉症の鼻水はサラサラとした水のような鼻水が特徴です。鼻づまりは、肥満細胞から放出されるロイコトリエンなどの物質が血管を刺激することで、血管が広がったり、粘膜が腫れてしまうことで起こります。
アレルギー性結膜炎の主な症状は目のかゆみや充血、涙目、ごろごろとした異物感などがあります。結膜は直接外界に接しているため抗原が入りやすいことや、アレルギー反応を引き起こす免疫細胞が多く存在していることなどから、アレルギー反応が生じやすい部位だとわれています。

・そのほかの花粉症の症状

花粉症の時期は気道全体が過敏になることで咳が出ることもあります。花粉症による咳は、痰の絡まない乾いた咳が特徴です。もともと喘息持ちの人は花粉により喘息が悪化しやすい傾向があるため注意が必要です。
また、花粉が原因で肌荒れしやすい人もいます。花粉が原因の肌荒れは花粉皮膚炎と呼ばれます。肌のかゆみや赤み、乾燥、ピリピリ感などの症状が現れます。皮膚には外界からの異物の侵入を防ぐバリア機能がありますが、乾燥などによりバリア機能が低下することで花粉が侵入しやすくなり、皮膚炎を起こしてしまいます。
症状が重い人は頭痛や頭重感、倦怠感といった症状が現れることもあります。花粉症により鼻水、鼻づまりなどの症状が現れているときは鼻の粘膜が炎症を起こしています。この炎症が鼻の奥の方へ広がると、額や頬、目などに痛みが生じることがあります。また、アレルギー反応によって放出される物質の影響で頭重感や倦怠感が現れることがあります。さらに、眠気も花粉症による症状である可能性があります。アレルギー性鼻炎により鼻づまりが起こると、取り込める酸素の量が減り、脳が酸素不足となって眠気が生じてしまいます。さらに、鼻水、鼻づまりなどの症状が夜間にも続くことで寝不足となり、昼間に眠気が生じている可能性もあります。

◇花粉症を防ぐための対策は?

・物理的に花粉をブロック

外出時は口や鼻、目に花粉が入り込まないようマスクや眼鏡をしましょう。身に着けるコートはポリエステルなどツルツルしたものを選ぶと花粉の付着を防ぐことができます。また、テレビやネットで花粉情報を入手し、花粉の多い日や花粉が多い時間帯(昼前後や夕方)はできるだけ外出を控えると良いでしょう。帰宅時は衣服に付着した花粉を家に入る前に払い、中に持ち込まないことが大切です。その後はうがいをすることで喉に侵入した花粉を洗い流すことができます。帰宅後すぐお風呂に入ってしまうのも良いでしょう。
家での工夫できるものとしては換気方法があります。換気時はできるだけ窓を開ける幅を狭くし、レースカーテンを活用することで室内に花粉が侵入することを防ぐことができます。また、花粉の侵入を防ぐ工夫をしていても、どうしてもある程度は室内に侵入してしまうので、こまめに掃除を行うことをおすすめします。空気清浄機を使用するのも良いでしょう。


・薬の使用

長引くつらい症状は日常生活にも支障をきたしてしまいます。セルフケアを行っても症状が現れる場合、薬を服用することで症状緩和が期待できます。花粉飛散予測日に合わせたり、症状が現れたら早めに薬を使用すると良いでしょう。
自分で購入できる市販薬については以下のようなものがあります。これ以外にも点眼薬や漢方薬などの選択肢もあります。
 ・抗ヒスタミン薬
鼻水やかゆみなどの症状を引き起こすヒスタミンの働きを抑えることによって、それらの症状緩和が期待できます。点鼻薬とは違い、鼻の症状だけでなくかゆみにも効果を発揮します。抗ヒスタミン薬は、開発時期の違いにより第一世代と第二世代の2種類に分けられます。第一世代は昔から使われてきた薬で、くしゃみや鼻水に対して即効性があります。しかし、副作用として眠気や口の渇き、めまいなどが現れやすい傾向があります。一方で第二世代の抗ヒスタミン薬は、眠気などの副作用が第一世代と比べて軽減されています。作用持続時間が長く、1日の飲む回数が少なくて済むものもあります。
第一世代抗ヒスタミン薬の代表例:クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩など
第二世代抗ヒスタミン薬の代表例:フェキソフェナジン塩酸塩、ロラタジン、エピナスチン塩酸塩など
 ・点鼻薬
点鼻薬は、鼻水や鼻づまり、くしゃみを緩和する効果が期待でき、ステロイド薬、抗アレルギー薬、血管収縮薬の大きく3つに分けられます。
ステロイド点鼻薬は鼻の粘膜で起きている過剰な免疫反応を抑えてくれることで効果を発揮します。高い抗炎症効果が期待できるので、つらい症状にはステロイド薬がおすすめです。市販で購入できるものにはベクロメタゾンプロピオン酸エステル、フルチカゾンプロピオン酸エステルがあります。ただ、ベクロメタゾンは1年間で1か月以内、フルチカゾンは1年間で3か月以内の使用に留めるよう定められているので注意が必要です。
抗アレルギー点鼻薬は比較的症状が軽い人におすすめです。飲み薬と比べ眠気など副作用が出にくい利点があります。市販で購入できるものにはクロルフェニラミンマレイン酸塩、クロモグリク酸などの成分があります。
血管収縮点鼻薬は、鼻の血管を収縮することで鼻づまりを解消してくれます。即効性があるのでつらい鼻づまりをすぐに改善したい人におすすめです。有効成分はナファゾリン塩酸塩です。しかし、日に何度も使用したり長期にわたって使用すると、効果が感じられなくなったり、鼻づまりが悪化してしまう可能性があります。これを点鼻薬性鼻炎と言います。点鼻薬性鼻炎になった場合はまず血管収縮薬の使用を止め、抗アレルギー薬の飲み薬やほかの点鼻薬を使用して症状を抑えながら鼻の粘膜の回復を待ちます。薬を使用しても鼻づまりが継続する場合は医療機関を受診しましょう。また、疾患や普段飲んでいる薬によっては注意が必要なので、購入の際は薬剤師や登録販売者へご相談ください。

・腸内環境の改善

花粉症の発症にかかわる免疫細胞の半数以上が腸内に存在していると言われています。腸内環境を改善することで免疫システムの正常化につながり、花粉症の緩和が期待できるとされています。腸内環境の改善に役立つ食品には、乳酸菌が摂れるヨーグルトや納豆のほか、食物繊維が摂れるワカメなどの海藻類、イモ類などがあります。また、乳酸菌のエサとなるオリゴ糖は大豆や玉ねぎ、ごぼうなどから摂取できます。そして、善玉菌の一種である酪酸菌は、免疫の要である制御性T細胞に働きかけ、アレルギー反応を抑えることが報告されています。しかし、酪酸菌はぬか漬けなど限られた食品からしか摂取できないため、サプリメントを利用するのも良いかもしれません。腸内環境を整えるためには食事だけでなく、適度な運動や十分な睡眠も大切です。


まとめ

◇おわりに
今回は多くの人が罹患しているとされる花粉症の症状や対策についてお話しました。ぜひ生活習慣の見直しにお役立てください。上記のようなセルフケアを行っても症状が長引いていたり、つらい症状に悩まされる場合は医療機関を受診しましょう。

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